風の停留所

母の看取りをきっかけに意識や生と死について探究しています。内側に湧いたものを表現する練習中です。

捨てられない

お題「捨てられないもの」

 

 

我が家はみんな溜め込む家族だ。

祖母は空いているスペースをみつければ何かしらを詰める。詰める。

冬眠前のリスかクマかな?と想うぐらいあっちこっちの引き出しをパンパンにするプロだ。

思い付きで詰め込んでいるので、あちこちで靴下やらいつぞやのお菓子屋らでてくる。

 

チチも姉もコレクションするのが好きな部類。好きなものがあるとそろえたくなるようだ。姉はハマっていたドラマで使われていた小道具のバインダーを買ってきた。にこにこしているが、たぶん使わないんだろう。保管するのが好きみたいだ。

 

 

そして、ハハである。

去年命をまっとうし旅立った彼女はたくさんのものを残していった。

優しさも強く生きる力強さも、そして彼女の私物も。

 

とにかくハハの荷物が多い。

字を書くことが好きだった母は日記やスケジュール帳の他、書道の作品やらも次々に出てくる。

栄養学について勉強していたため、資料やノートは十冊以上。発表に使った模造紙やらなんやらも山のようにでてくるでてくる。本も。

ハハは祖母の血をついでこれまた整頓が苦手な人だった。

 

 

 

 

どんなに哀しくとも人生は続く。

生活をしていくには居住スペースは整えなければならない。

 

ずっと手をつけていなかった荷物も少しずつ触るようになっていった。

片付けはじめは、一つ一つに触るたびに想いだし泣き、よみがえってきた記憶に泣き、泣き、休み、泣き・・・の繰り返しで全く進まなかった。

 

わたしはまだいい方でチチはまったく触ることができないでいる。

触らずとも泣いているのだから、奥の方から2,3個ひっぱりだしたら固まったまま動けなくなるかもしれない。

 

わたしが片付けていると「字が書いてあるものは絶対捨てちゃだめだよ」とチチは言う。

チチはハハが書いた字がすきだった。字が上手なハハを誇りに想っていた。

そうだね、私もハハの字が恋しい。流れるような字も、ポップな字も、その時によって書き分けていたハハの字。ひとからも字を書いてとよく頼まれていた。

絵はおそろしく苦手だったけど、字はパターンとコツが分かればかけるんだよっといつも言っていた。ちゃんと習ったのはこどもの時の2年くらいと言っていたから、なかなか才能があったのかもしれない。

こどもながらに、ハハが書く字も、書いている時の顔も、すきだった。

 

 

 

でもめーーーちゃたくさんあるんだっつうの!

このままにしていおいても、整頓されてない以上は振り返ることもできないのだ。

休みの日の度に棚やら引き出しの中を整理して半年ほど経った。

まだ終わりは見えない。

 

 

 

 

捨てれないのは、捨ててしまったらそのひとのことを捨てているようなきもちになるからかもしれない。

忘れてしまうのではないか、と不安だからかもしれない。

ハハがいない空気にどんどん世界が染まっていくようで、さみしくなる。

当たり前になっちゃうんだな。

持ち主が居ない荷物があるのも切ないのだけど。

 

 

 

 

チチよ、わたしもほんとは捨てたくないんだよ。

ハハが触ったものぜんぶぜんぶ、取っておきたいって想ったりもするよ。

 

でも自分たちのことをやっていかなきゃなぁとも思っている。

天国から見て、ハハの荷物でいっぱいでごたついてる家を観たいとはきっと思わないだろう。

 

 

捨てられないものを、ひとつひとつ。

ゆっくりゆっくり片付けていく。

片付けが終わったとき、わたしはなにをおもうだろうか

 

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