愛情の交差
昨夜から目の奥が痛い。眼球というより、目の奥の筋肉が痛む。日ごろから体調の変化が目にでることが多いので、しばらくは気を付けなければいけない。
私はウインクができないー片目を意思でつむることができないので、痛めた方の目をなるべく休めたいと思っても、うまくそちらだけつむることができず、結果的に一日を斑目で過ごしている。
改めて考えると、普段いかに視覚を頼って生活しているのかと気づかされる。
以前行ったダイアログインザダークでも、見えない世界での体験はとても興味深かったなぁ。見えないことへの不安よりも他の感覚がフル回転していつもより感じられることがたくさんあって、自分のからだのおもしろさを再発見した感じだった。
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今週のお題というのが、最近見た映画とあるので、映画の話。
普段から映画館で映画を見るということをしていない私だが、予告編を見て、「これは見に行かなければいかん」と即決したのが【ミッドナイトスワン】だ。
あらすじ:
主演:草彅剛 × 監督:内田英治 オリジナル脚本作 トランスジェンダーとして日々身体と心の葛藤を抱え新宿を舞台に生きる凪沙と、 親から愛を注がれず生きるもバレエダンサーを夢見る少女・一果の姿を通して“切なくも美しい現代の愛の形”を描く「ラブストーリー」。
(うっ、思い出しただけでせつない・・・)
色々感じたのだけど、ことばにするのが難しくて、この感情がどの名前なのかが分からない。
とにかく美しい。苦しい。でもあたたかい。
映画を見終わってひたすらにぼーっとして立てなくて、映画館でてすぐに本屋で小説を買いその日に読了した。
この映画は、LGBTQや虐待というのがあらすじにはなるのだけれど、生きづらさのなかで必死に生きるひとの生き様だなと思う。
孤独を抱えて生きてきた凪沙さんが、一果のために生きていくこと自分の糧にしていく姿が美しくも痛々しくもあって、
最後は胸が痛かった。
凪沙さんの愛情も、実花先生の期待も、早織の愛情も、凪沙さんのお母さんの戸惑いも、瑞貴の葛藤も、りんの孤独も、みんなそれぞれ葛藤を抱えていて、
誰がひどいとか悪いとか、そういうことで言い切れない、人の想いがそれぞれ絡み合ったリアルをものすごく見せられた感じで、
自分の中にある感覚を引っ張り出されたから、見終わってずいぶん経つのにまだ何度も想いだしているのだろうか
凪沙さんの愛情が、一果に伝わっているようで、願うようには伝わっていなかったり、愛情の交差が切なかった。
一果の気持ちが分かるようで描かれきれていない余白があって、凪沙さんに対してどう思っていたのかが分かりきれない。
「お母さん」って呼ばなかったんだなぁ…。
その時は分からない・見えないことってあるよなぁって想う。
時間が経ってから、一果が凪沙さんを想う時、どんなことを感じるのかな。
ハニージンジャーソテーを多くよそってくれた、とか髪をやさしく梳いてくれた、とか、やさしくだきしめてくれた、とか
時間が経ってから、経ったからこそ見えるものってきっとあるだろうと思う。
さりげない母親の愛情に気づいたのってずいぶん経ってからだったなぁ
おとなになって、やってくれていた、ちいさなことに気づいて、愛おしくなる。
本人が居ないのが惜しいけれど。
凪沙さんのずっと願ってきた未来とは違う現実になっていたけれど、
凪沙さんはしあわせだったのだろうか
凪沙さんが一果の母になることはなかったけれど、一果が踊ることを守り続けたのは凪沙さんだった
海辺で一果の白鳥を見る凪沙さんの目が
一果を育てるという意志と同時に小さい頃の自分を癒していたんだなぁ
愛情ってなんだろう
実際のバレエの世界はかなり過酷だ。
一果があの世界の中で踊っているかな…幸せでいて…と思わず願ってしまう。
二人の人生の一片を見て、知らないことも多いけれど、どうかしあわせに、と願う。
またあの世界を観たい。